金買取のトラブル事例と対処法|悪質業者にだまされないための注意点

金の価格が高騰を続ける今、「昔購入したアクセサリーを整理したい」「遺産として受け継いだ金製品を現金化したい」と、金の売却を検討している方は非常に多いのではないでしょうか。

しかし、その一方で、専門知識がない消費者を狙った悪質な買取業者によるトラブルが後を絶ちません。「まさか自分が騙されるわけない」と思っていても、巧妙な手口によって大切な資産を不当に安く買い叩かれてしまうケースは、決して他人事ではないのです。

この記事では、実際のトラブル事例をもとに、悪質業者の見分け方やトラブルに巻き込まれやすい人の心理まで解説。あなたが悪質な業者に騙されることなく、安心して大切な金製品を売却するポイントを解説します。

その金買取、危険かも?実際にあった悪質業者のトラブル事例

出典元:Canva

まずは、国民生活センターなどに実際に寄せられた相談の中から、特に多いトラブル事例を5つのパターンに分けてご紹介します。悪質業者の手口を知ることが、被害を防ぐための第一歩です。

事例1<出張買取>「不用品はないか」と訪問され、強引に貴金属を安値で買い取られた(押し買い)

「ご近所で不用品の無料回収をしています。何か捨てるものはありませんか?」と作業着姿の男が突然訪問してきた。不用な衣類を渡すと、「他に貴金属などはありませんか?古くても壊れていても大丈夫です」としつこく言われ、断りきれずに古いネックレスを見せた。すると、男はそれを乱暴に掴み、と一方的に安価安価な買取価格を告げ、お金を置いて出て行ってしまった。あまりの強引さと恐怖で、何も言えなかった…。

これは、「押し買い」と呼ばれる典型的な手口です。依頼もしていないのに突然訪問し、利用者が断っているにもかかわらず居座り、貴金属などを不当に安い価格で無理やり買い取る行為は、「特定商取引法」で禁止される行為です。

目的を偽って訪問し、一度家に入ると高圧的な態度で契約を迫るのが特徴です。

事例2<店頭買取>目の前で重量をごまかされ、本来の価値より大幅に低い金額で売ってしまった

金のネックレスを売りたくて、近所の買取店に持ち込んだ。店員は「こちらでお預かりして査定します」と言って、ネックレスを店の奥に持っていった。数分後、「査定結果が出ました。5グラムでしたので、本日の相場で25,000円です」と言われた。そんなに軽いかな?とは思ったが、専門家が言うなら間違いないだろうと思い、売却してしまった。後日、別の店で同じくらいの大きさのネックレスの重さを聞いたら10グラム近くあると言われ、騙されたことに気づいた。

金の買取価格は「当日のグラム単価 × 重量」で決まるため、重量をごまかされると買取額は大幅に下がります。信頼できる店舗は必ず利用者の目の前で、計量器のメモリが見えるように重さを測ります。

「奥で査定します」と言われた場合は、重量をごまかされるリスクがあるため、はっきりと「目の前で測ってください」と要求しましょう。

事例3<宅配買取>査定額が低く返送を希望したら、高額なキャンセル料や往復送料を請求された

「どこよりも高く買う」というネット広告を見て、宅配買取を申し込んだ。無料の梱包キットに金貨を入れて送ったが、後日メールで届いた査定額は、自分で調べた相場の半額以下だった。納得できず返送を依頼したところ、「査定後のキャンセルには、手数料として5,000円と往復の送料・保険料がかかります」と高額な請求をされた。公式サイトには小さな文字で書かれており、気づかなかった。結局、手数料を払うのが馬鹿らしくて、泣く泣く安い金額で売るしかなかった。

宅配買取は手軽で便利ですが、キャンセル時の条件を事前に確認しないとトラブルになりがちです。優良な業者の多くはキャンセル料や返送料を無料としていますが、悪質な業者はわざと低い査定額を提示し、高額なキャンセル料で売却を強制させる手口を使います。

申し込む前に、公式サイトの「よくある質問」や利用規約を隅々まで確認することが重要です。

事例4<共通>「手数料」と称して査定額から不明瞭な金額を差し引かれた

金のインゴットの買取を依頼。当日の1グラムあたりの買取価格が10,000円で、インゴットは10グラムだったので、10万円になると思っていた。しかし、提示された金額は8万円だった。理由を尋ねると、「査定額から手数料として20%を引かせていただいております」と説明された。手数料がかかるなんて聞いていなかったが、契約書にも小さく書いてあり、サインした後だったのでどうすることもできなかった。(50代・男性)

「買取手数料」「溶解手数料」「査定料」など、業者によって様々な名目の手数料が存在します。悪質な業者は、高いグラム単価を提示して客を集め、後から高額な手数料を差し引くことで利益を得ています。

買取を依頼する前に、手数料の有無と、かかる場合は何パーセントなのかを必ず確認しましょう。「手数料は一切無料」と明言している業者を選ぶのが最も安全です。

事例5<共通>金の純度(K18をK10など)を偽って査定額を不当に下げられた

祖母から譲り受けた指輪に「K18」という刻印があったので、K18として査定を依頼した。しかし査定士は、「刻印はありますが、海外製で信用できない。詳しく調べたらK10でした」と言い、K10の価格で査定額を提示してきた。専門的なことを言われ、反論できずに売却してしまったが、後から考えると怪しい。本当にK10だったのか、今となっては確認する術がない。(20代・女性)

金の純度は価値を決める重要な要素です。悪質な業者は、利用者の知識がないことにつけ込み、意図的に純度を低く見積もって安く買い叩こうとします。

特に刻印がないものや海外製品の場合、こうした手口が使われやすくなります。複数の業者で査定を受け、純度の判断が各社で同じかどうかを確認する「相見積もり」が非常に有効な対策となります。

なぜ騙される?金買取トラブルに巻き込まれやすい人の共通点と心理

出典元:Canva

悪質な業者に騙されてしまう人には、いくつかの共通点があります。業者側は、こうした人々の心理や知識不足を巧みに利用してきます。自分が当てはまっていないか、チェックしてみましょう。

共通点1:金の相場や基礎知識(純度・重量)を全く調べていない

「今日の金の買取価格は1グラムいくらなのか」「K24とK18はどう違うのか」といった基本的な知識がないまま査定に臨むと、業者の言いなりになってしまいます。

業者が不当に低い価格を提示しても、それが適正なのか判断する基準がないため、簡単に信じてしまうのです。

共通点2:「今だけ」「あなただけ」という限定的な言葉に弱い

「金の相場は明日には暴落します。今日売るのが一番です」
「店長の決裁で、今決めてくれるなら特別に1万円上乗せします」

悪質な業者は、こうした言葉で利用者の判断力を鈍らせ、冷静に考える時間を与えずに即決を迫ります。焦りやお得感から、他の業者と比較検討することなく契約してしまうのです。

共通点3:押しに弱く、その場で断ることが苦手

「せっかく来てもらったのに、断るのは申し訳ない…」
「査定士の態度が威圧的で、怖いから断れない…」

特に自宅に来てもらう出張買取の場合、断りにくいという心理が働きやすくなります。悪質業者はそれを見越して強引に契約を迫ったり、キャンセルを伝えても長時間居座ったりすることがあります。

共通点4:複数の業者を比較検討するのが面倒だと感じている

いくつかの業者に査定を依頼し、比較するのは時間も手間もかかります。「最初に見つけた業者でいいや」「早く現金化したい」という気持ちから、1社だけの査定で売却を決めてしまうと、その査定額が本当に適正だったのかを知る機会を失ってしまいます。

結果的に、数十万円単位で損をしてしまう可能性もあるのです。

悪質業者はこうした心理や知識不足につけ込んでくる

上記のような心理は、誰にでも起こりうることです。悪質業者は、まさにこうした人間の心の隙を突くプロです。彼らの巧妙なトークやテクニックに騙されないためには、次にご紹介する「見分け方」と「自己防衛策」をしっかりと身につけることが不可欠です。

契約前に確認すべき悪質業者の見分け方と注意点

出典元:Canva

ここでは、トラブルを未然に防ぐために、契約前に必ずチェックすべき悪質業者の見分け方を6つご紹介します。一つでも当てはまる場合は、その業者の利用は避けるべきです。

会社の公式サイトに「古物商許可番号」の記載がない

中古品を売買するすべての事業者は、法律(古物営業法)に基づき、都道府県の公安委員会から**「古物商許可」**を取得する義務があります。これは、事業者が警察の監督下にあり、盗品などの流通を防ぐための重要な制度です。

信頼できる業者は、必ず公式サイトの「会社概要」や「特定商取引法に基づく表記」のページに**「〇〇県公安委員会許可 第〇〇〇〇号」**という形式で許可番号を明記しています。許可番号が記載されていない業者は、古物商許可を取得していない可能性があり、注意が必要です。

「なんでも高価買取」を謳い、金の専門性が見られない

「ブランド品、お酒、切手、骨董品、なんでも高価買取します!」と幅広くアピールしている業者の中には、特定のジャンルに深い専門知識を持たないリサイクルショップのような業者も含まれます。

金の価値を正しく判断するには、相場知識はもちろん、デザイン性やブランド価値、付随する宝石の価値まで見極める専門性が必要です。公式サイトに金や貴金属の買取実績が豊富に掲載されているか、専門の査定士が在籍しているかなどを確認し、金の買取を強みとしている業者を選びましょう。

出張料・査定料・キャンセル料などの手数料体系が不明瞭

優良な買取業者の多くは、査定に関わる手数料を「完全無料」としています。一方、悪質な業者は手数料で利益を得ようとするため、手数料に関する記載が意図的に曖昧にされています。

公式サイトの目立つ場所に「出張料・査定料・キャンセル料などすべて無料」と明記されているかを確認しましょう。

もし記載が不明瞭な場合は、電話で「査定額に納得できずキャンセルした場合でも、本当に1円も費用はかかりませんか?」と明確に質問し、その回答に少しでも濁すような点があれば注意が必要。利用は見送るのが賢明です。

会社の住所や固定電話の番号が記載されていない、または実在しない

公式サイトの会社概要を確認し、会社の所在地(住所)や連絡先がきちんと記載されているかを確認しましょう。連絡先が携帯電話の番号しか記載されていない、住所が架空のものだったり、ただのレンタルオフィスだったりする業者は、トラブルが起きた際に連絡が取れなくなる可能性があり、非常に危険です。

Googleストリートビューなどで、実際にその住所に会社が存在するのかを確認するのも有効な手段です。

極端に悪い口コミや「キャンセルできない」といった評判が多い

Googleマップや口コミサイト、みん評などで業者名を検索し、実際に利用した人の評判を確認しましょう。もちろん、すべての口コミを鵜呑みにするのは危険ですが、以下のような内容の悪い口コミが複数見られる場合は注意が必要です。

  • 「電話対応が高圧的だった」
  • 「キャンセルを伝えたら態度が豹変した」
  • 「何の連絡もなく、約束の時間に査定に来なかった」
  • 「提示された査定額が相場の半分以下だった」

特に「キャンセルできない」「手数料を請求された」といった金銭トラブルに関する書き込みが多い業者は、避けるべきでしょう。

口コミを調べるのが手間という方はGeminiやチャットGPTのようなAIに「買取店の○○の悪い口コミをまとめて」と言えば口コミをまとめてくれます。

アポなしで突然訪問してくる(飛び込み営業)

「押し買い」の事例でも触れた通り、依頼もしていないのに突然訪問してくる業者は悪質業者である可能性が高いです。特定商取引法で禁止されている「不招請勧誘」にあたるため、インターホン越しにきっぱりと断り、絶対にドアを開けてはいけません。

大切な金を1円でも高く、安全に売る5つのポイント

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悪質な業者を見抜くだけでなく、利用者自身が少しの知識と準備をすることで、トラブルを回避し、より有利な条件で金を売却することができます。安全に売るためのポイントを5つ詳しく解説していきます。

売却当日の金相場(買取価格)を自分で調べておく

査定に臨む前に、必ずその日の金の買取価格をインターネットで調べておきましょう。「田中貴金属工業」や「三菱マテリアル」といった大手地金商が毎日公表している価格が、日本の金相場の指標となります。

【調べるべき価格】

  • K24 (24金): 純金。インゴットなど。
  • K18 (18金): アクセサリーに最も多く使われる。金の含有率75%。
  • K10 (10金): 金の含有率約42%。

多くの買取業者のサイトでも本日の買取価格が公表されています。これらの価格を事前に把握しておくだけで、業者が提示する査定額が妥当かどうかを判断する大きな武器になります。

査定の様子(計量・純度の確認)は必ず目の前で見せてもらう

トラブル事例でもあったように、査定品を目の届かない場所に持っていかせると、重量をごまかされたり、最悪の場合すり替えられたりするリスクがあります。査定を依頼する際は、

  • 計量器のディスプレイが見える位置で、目の前で重さを測ってもらう。
  • 純度を調べる際も、どのような方法で行うのか説明を求め、目の前で作業してもらう。

この2点を徹底してください。「お客様の前で査定します」と明言している、透明性の高い業者を選ぶことが大前提です。

その場で即決しない!最低2〜3社で相見積もりを取る

大切な金を1円でも高く、そして安全に売るための最も効果的な方法が「相見積もり」です。複数の業者に査定を依頼することで、自分の金製品の適正な市場価値がわかり、最も高い価格を提示した業者に売却することができます。

査定士から「今決めてくれたら上乗せします」と即決を迫られても、「一度持ち帰って検討します」「他の業者とも比較したいので」と、毅然とした態度で断りましょう。相見積もりを嫌がる業者は、価格に自信がない悪質な業者である可能性が高いと言えます。

査定額の内訳(グラム単価×重量-手数料=買取金額)を必ず確認する

査定額が提示されたら、合計金額だけを聞いて納得するのではなく、その内訳を必ず確認しましょう。

  • 金の品位(K18など)ごとのグラム単価はいくらか?
  • それぞれの重量は何グラムだったか?
  • 査定額から差し引かれる手数料はあるか?あるなら何%か?

これらの点を明確に説明できない、あるいは質問に対して曖昧に答えるような業者は信用できません。内訳が記載された査定書や見積書を書面で出してもらうのが理想です。

契約書(買取伝票)の内容をしっかり確認し、必ず控えをもらう

最終的に売却を決めたら、契約書(買取伝票や明細書)にサインをします。サインをする前に、以下の項目が正確に記載されているかを必ず自分の目で確認してください。

  • 買取業者の会社名、住所、電話番号
  • 古物商許可番号
  • 契約年月日
  • 買い取られる品物の品名、純度、重量、特徴
  • 買取金額(単価と合計額)
  • クーリング・オフに関する記載(出張買取の場合)

内容に相違がなければサインをし、必ず控えを受け取って大切に保管しましょう。この書類は、万が一トラブルになった際の重要な証拠となります。

もしトラブルに遭ってしまったら?契約後でも使える対処法と公的な相談窓口

出典元:Canva

最善の注意を払っていても、悪質な業者の巧妙な手口によって意に沿わない契約をしてしまう可能性はゼロではありません。しかし、諦めないでください。契約後でもあなたを守ってくれる制度と、助けてくれる専門家がいます。

【出張買取の場合】契約から8日以内なら無条件で解約できる「クーリング・オフ制度」

訪問購入(出張買取)は、特定商取引法によって「クーリング・オフ」制度が適用されます。

クーリング・オフとは、契約書面を受け取った日を1日目として、8日間以内であれば、消費者側から一方的に、無条件で契約を解除できるという非常に強力な制度です。

「もう売ってしまったから返ってこない」と泣き寝入りする必要はありません。たとえ業者に「うちにはクーリング・オフはない」と言われたとしても、それは法律違反です。期間内であれば、あなたの意思表示のみで契約は解除され、業者は品物を返還する義務があります。

クーリング・オフの具体的な手続き方法(内容証明郵便の活用)

クーリング・オフの意思表示は、後々のトラブルを防ぐために必ず書面で行います。電話で伝えただけでは、「聞いていない」としらを切られる可能性があるからです。

最も確実で推奨される方法は、**「内容証明郵便」**を業者に送付することです。これは、郵便局が「いつ、誰が、誰に、どのような内容の文書を送ったか」を公的に証明してくれるサービスで、契約解除の意思表示をしたという強力な証拠になります。

手続きは郵便局の窓口で行えます。書き方が分からない場合は、次に紹介する消費生活センターで相談すれば、書き方のアドバイスももらえます。

どこに相談すればいい?専門家が対応してくれる公的な相談窓口

トラブルに遭った時、一人で悩んだり、直接業者と交渉したりするのは非常に危険で、精神的にも大きな負担となります。必ず、以下のような公的な専門機関に相談してください。

相談窓口1:消費生活センター(消費者ホットライン「188」)

商品やサービスの契約に関するトラブル全般について相談できる、消費者のための公的な窓口です。「188(いやや!)」に電話をかけると、最寄りの消費生活センターにつながり、専門の相談員が無料で相談に乗ってくれます。
クーリング・オフの手続き方法のアドバイスや、業者との交渉(あっせん)を手伝ってくれる場合もあります。金買取でトラブルになったら、まずはこちらに電話してください。

相談窓口2:警察(相談専用電話「#9110」または最寄りの警察署)

「無理やり売らされた」「脅された」「居座られて帰ってくれない」など、身の危険を感じるような悪質なケースや、犯罪行為が疑われる場合は、警察に相談しましょう。
緊急性が高くない相談の場合は、相談専用ダイヤルの「#9110」に電話をしてください。オペレーターが状況を聞き、適切な部署につないでくれます。もちろん、身の危険が差し迫っている場合は、迷わず110番通報してください。

まとめ

大切な資産である金をめぐる買取トラブルは、誰の身にも起こりうる問題です。しかし、その手口の多くはパターン化しており、正しい知識を持つことで、そのほとんどは未然に防ぐことができます。

金の売却は、あなたの資産を有効に活用するための素晴らしい機会です。悪質な業者にその機会を奪われることがないよう、この記事で得た知識を武器に、慎重に、そして賢く行動してください。あなたが安心して、納得のいく価格で大切な金を売却できることを心から願っています。

質屋の中島では、確かな鑑定眼でお客様の大切なお品物を査定し、スムーズな事業資金の調達をお手伝いいたします。

当店では、質入れだけでなく買取サービスも提供しております。無料査定も可能ですので、LINEもしくはお問い合わせフォームより、いつでもご連絡ください。

執筆者プロフィール

店長 河本 明
店長 河本 明
店長 河本 明
買取業界歴15年以上。
買取の得意分野:ブランド品、ジュエリー、時計
ジュエリーコーディネーター ウォッチコーディネーターの資格を保有しております。