金買取価格はどう決まる?相場の仕組みと価格変動のポイント
金の価格が歴史的な高騰を続けている今、「自宅に眠っている金のアクセサリーは、一体いくらで売れるのだろう?」「投資で保有している金を、一番良いタイミングで現金化したい」と考えている方も多いのではないでしょうか。
しかし、いざ売却しようと思っても、買取店のウェブサイトに並ぶ「本日の金買取価格」という数字が、一体どのように決まっているのか、よくわからない方も少なくないはずです。
- なぜ毎日価格が変わるの?
- K18とK24では、なぜあんなに値段が違うの?
- ニュースで見る「円安」は、金の価格にどう関係するの?
このような疑問を解消せずに売却してしまうと、知らず知らずのうちに損をしてしまうかもしれません。金の買取価格が決まる仕組みを正しく理解することは、あなたの大切な資産価値を最大化するための第一歩です。
この記事では、金の売却を検討しているすべての方に向けて、金買取価格の決まり方から金相場の仕組み、価格変動の要因となる世界の経済動向など、専門的な内容を誰にでもわかるように徹底解説します。
金の買取価格はどう決まる?基本の仕組み

出典元:Canva
金製品の基本的な買取価格は、非常にシンプルな計算式で成り立っています。
まずは基本!買取価格を算出するシンプルな計算式
【金製品の買取価格 = 重量(g) × 純度に応じた1gあたりの金買取相場】
この計算式が、すべての基本です。金製品の価値は、「どれくらいの重さ」「どれくらいの純度の金が使われているか」、そして「査定当日の1gあたりの金相場はいくらか」という3つの要素の掛け算で決まるのです。
なぜ同じ重さでも買取価格が違う?
重量 (g)
これは文字通り、金製品そのものの重さです。買取店では、0.1gや0.01gまで精密に測定できる専用の計量器を使って測ります。重ければ重いほど、当然ながら価値は高くなります。
純度 (Karat)
金製品に含まれる金の純粋な割合を示します。金は非常に柔らかい金属であるため、アクセサリーなどに加工する際は、強度を高めるために他の金属(銀、銅、パラジウムなど)を混ぜ合わせることが一般的です。
この混ぜ合わせる割合によって純度が変わり、買取価格も大きく変動します。純度については後の章で詳しく解説します。
1gあたりの金買取相場
これが日々変動する要素です。この価格は、買取店が独自に決めているわけではなく、世界的な金の市場価格や為替レートを基に、毎日更新されています。
実際の計算例でシミュレーションしてみよう
言葉だけでは分かりにくいので、具体的な例で計算してみましょう。
【例】重さ10gの「K18ネックレス」を売る場合
- 前提: 査定当日の買取店が公表している「K18の1gあたり買取相場」が 8,000円 だったとします。
- 計算式:重量 (10g) × K18の1gあたり買取相場 (8,000円) = 買取価格 80,000円
このように、基本の計算は非常にシンプルです。ただし、これはあくまで理論上の価格であり、最終的な受取額はここから「手数料」が引かれる場合があるため注意が必要です。
最終的な受取額に影響する「手数料」の存在
買取店によっては、公表しているグラム単価から「買取手数料」や「目減り料」といった名目で数%〜20%程度を差し引く場合があります。
たとえば計算上は10万円のはずでも、20%の手数料で実際の受取額は8万円になることも。
手数料はお店の利益確保のためで、存在自体が悪いわけではありません。ただし、事前に説明しているかどうかが重要です。
確認する際は「手数料はかかりますか?」ではなく「公表価格から引かれますか?」と聞くのがポイント。
また「手数料無料」と表示していても、あらかじめ単価を低めに設定しているケースがあるので注意が必要です。
毎日変動する「金相場」の仕組み

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さて、計算式の3要素のうち、最も謎めいているのが「金相場」ではないでしょうか。この価格は一体、世界のどこで、誰が、どのように決めているのでしょう。その仕組みを解き明かします。
世界の基準となる「ロンドン金価格」とニューヨーク市場
世界の金取引の中心となっているのが、ロンドンとニューヨークの市場です。特に、ロンドン貴金属市場協会(LBMA)が1日に2回発表する「ロンドン金価格(LBMA Gold Price)」は、世界の金取引における指標価格として広く利用されています。
これに加え、世界最大の商品先物市場であるニューヨーク商品取引所(COMEX)で取引される「金先物価格」も、世界の金価格に大きな影響を与えています。
国際的な市場で、世界中の投資家や中央銀行、宝飾品メーカーなどの需要と供給によって、24時間絶え間なく金のドル建て価格が変動しているのです。
【最重要】日本の金価格は「ドル円為替レート」に大きく左右される
ここが非常に重要なポイントです。ロンドンやニューヨークで決まる金の国際価格は、すべて「米ドル建て(1トロイオンスあたり〇〇ドル)」で表示されます。1トロイオンスは約31.1035gです。
しかし、私たちが日本国内で金を売買する際は、「円」で取引します。そのため、国際的なドル建ての金価格を、日本円に換算する作業が必要になります。この時に使われるのが、ニュースでもおなじみの「ドル円為替レート」です。
日本の金買取価格は、この「国際的なドル建て金価格」と「ドル円為替レート」という2つの大きな変動要因を掛け合わせて算出されているのです。
円高だと金価格は下がり、円安だと上がるのはなぜ?
この関係性を理解するために、具体例を見てみましょう。
仮に、国際的な金価格が「1トロイオンスあたり2,000ドル」で全く動かなかったとします。
- 円高の場合(1ドル = 100円):
- 2,000ドル × 100円 = 200,000円
- 1gあたり価格:200,000円 ÷ 31.1035g ≒ 6,430円
- 円安の場合(1ドル = 150円):
- 2,000ドル × 150円 = 300,000円
- 1gあたり価格:300,000円 ÷ 31.1035g ≒ 9,645円
このように、海外の金価格が同じでも、円安になるだけで国内の金価格は上昇し、円高になると下落するのです。
近年の日本で金価格が過去最高値を更新し続けている背景には、国際的な金価格の上昇に加えて、この「歴史的な円安」が極めて大きな影響を与えています。
買取店が毎日公表している「本日の金買取相場」の見方
国内の金買取業者は、こうした国際金価格と為替レートの変動を基に、自社の利益や手数料を考慮した上で、毎朝10時頃にその日の「金買取相場」をウェブサイトなどで公表します。
この価格は、純度ごと(K24、K22、K18、K14、K10など)に1gあたりの円価格で示されており、これが私たちの買取価格を計算する際の基準となるのです。
金買取価格変動の要因5つ

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では、そもそも国際的な金のドル建て価格は、どのような理由で変動するのでしょうか。金は、その輝きだけでなく「安全資産」としての側面も持っており、世界の経済や社会情勢を映し出す鏡のような存在です。
要因1:世界情勢の悪化と地政学リスク(「有事の金」と呼ばれる理由)
戦争、紛争、テロなど、世界情勢が不安定になると、人々は将来への不安から、株や通貨といった価値が変動しやすい資産を手放し、より安全で普遍的な価値を持つ資産を求めるようになります。
金は、特定の国や企業が価値を保証しているわけではない「無国籍通貨」とも呼ばれる実物資産です。そのため、国家の信用が揺らぐような非常事態(有事)になると、世界中の投資マネーが金に集まり、需要が高まって価格が上昇する傾向があります。これが有事の金と呼ばれる所以です。
要因2:世界的な経済不安やインフレへの懸念
リーマンショックのような金融危機や、世界的な景気後退の懸念が高まると、株式市場などから資金が引き揚げられ、安全資産である金へと避難(フライト・トゥ・クオリティ)する動きが活発になります。
また、インフレ(インフレーション)、つまり物価が継続的に上昇し、お金の価値が目減りしていく局面でも、金の価値は注目されます。現金や預金の価値がインフレによって下がっていくのに対し、実物資産である金はインフレに強いとされており、資産防衛の手段として買われるため、価格が上昇しやすくなります。
要因3:各国の金融政策と金利の動向(金利が上がると金価格は下がる?)
金そのものは、銀行預金のように利息を生んだり、株式のように配当を出したりしません。そのため、金利の動向は金価格に大きな影響を与えます。
一般的に、アメリカなど主要国の金利が引き上げられると、ドル預金など金利が付く金融商品の魅力が高まります。投資家は、利息を生まない金を売って、より有利なドル建て資産に資金を移すため、金の需要が減って価格は下落する傾向があります。
逆に、金利が引き下げられる局面では、金利が付く資産の魅力が相対的に低下するため、利息を生まないという金のデメリットが薄れ、金が買われやすくなり価格は上昇する傾向にあります。
要因4:ドルの信認と代替資産としての金の役割
金の国際価格は米ドル建てで取引されるため、基軸通貨である米ドルの価値(信認)と金価格は、シーソーのような関係にあります。
アメリカの経済指標が悪化するなどしてドルの信認が揺らぎ、ドル安になると、相対的に金の価値が高まり、価格は上昇します。逆に、アメリカ経済が好調でドル高になると、金の魅力が薄れて価格は下落する傾向があります。
要因5:金の需要(宝飾品・工業用)と供給(生産量)のバランス
もちろん、実物としての需要と供給のバランスも価格に影響します。
- 需要サイド: 世界の金需要の約半分は、インドや中国を中心とした宝飾品向けです。また、金は優れた導電性や耐腐食性から、スマートフォンやパソコンの電子部品にも使われています。こうした実需が価格を下支えしています。
- 供給サイド: 金の年間生産量(鉱山からの採掘量)は限られており、急に増やすことはできません。この希少性が、金の価値を長期的に担保している要因の一つです。
あなたが持つ金の本当の価値は?「純度」と「付加価値」を理解しよう

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金相場の仕組みがわかったところで、次にあなたの手元にある金製品そのものに目を向けてみましょう。その価値は、金の純度と、金以外の価値(付加価値)によって決まります。
金の純度(カラット)とは?K24・K18・K10の価格差
金の純度は、24分率で表され、単位は「カラット(Karat)」、記号では「K」と表記されます。
- K24 (24金): 純金。金の含有率が99.99%以上のものを指します。非常に柔らかく、インゴットや金貨などに使われます。買取相場は最も高くなります。
- K18 (18金): 金の含有率が75%(18/24)。残りの25%は銀や銅などを混ぜた合金です。強度と輝きのバランスが良く、日本のジュエリーで最も一般的に使われています。
- K10 (10金): 金の含有率が約41.7%(10/24)。硬度が高く、傷がつきにくいのが特徴。ファッションジュエリーなどでよく見られます。
当然ながら、金の含有率が高いほど1gあたりの買取価格は高くなります。K18の買取価格がK24のちょうど75%(3/4)になるわけではなく、精錬コストなどが考慮されるため、買取店が設定する独自のレートになります。
刻印で確認!自分の金製品の純度を調べる方法
お持ちの金製品の純度は、多くの場合、製品自体に打たれた**「刻印」**で確認できます。ネックレスの留め具のプレート部分、指輪の内側などをよく見てみましょう。
- 一般的な刻印: 「K24」「K18」「K10」など
- 海外製品の刻印: 千分率で「999」(K24相当)、「750」(K18相当)、「417」(K10相当)など
- カラーゴールドの刻印: 「K18WG」(ホワイトゴールド)、「K18PG」(ピンクゴールド)など
これらの刻印があれば、おおよその純度を自分で把握することができます。
インゴット(地金)とジュエリーで買取価格が違う理由
買取店の価格表を見ると、「インゴット(地金)」と「K24(スクラップ)」で価格が分かれていることがあります。インゴットは、信頼できるブランドの刻印があり、品位が保証されているため、溶解・精錬するコストがかからず、そのまま再販できるため最も高いレートで買い取られます。
一方、K24のジュエリーなどは一度溶かして分析する必要があるため、「スクラップ(溶解対象)」扱いとなり、インゴットより少し低い買取価格が設定されるのが一般的です。
グラム価格だけじゃない!ブランド・デザイン・宝石の「付加価値」
ここまでの話は、あくまで「素材としての金」の価値でした。しかし、あなたの金製品が、
- カルティエ、ブルガリ、ティファニーなどの有名ブランドのジュエリー
- 人気デザイナーが手掛けた、デザイン性の高い作品
- 大粒のダイヤモンドや、ルビー、サファイアなどの貴石が付いている
といった場合、話は変わってきます。これらの製品は、素材の価値に加えて、ブランド価値、デザイン性、宝石の価値といった「付加価値」が上乗せされて査定されます。
金の知識だけでなく、ブランドや宝石の専門知識が豊富な買取店に査定を依頼しないと、この「付加価値」が正しく評価されず、単なる金の重さだけで買い取られてしまい、大きく損をする可能性があります。
壊れたネックレスや金歯でも価値が失われないのはなぜ?
「チェーンが切れたネックレス」「片方だけのピアス」「歪んだ指輪」、さらには「治療で使った金歯」なども、買取が可能です。
これらは製品としての価値は失われていますが、「素材としての金の価値」は全く変わらないからです。買取店は、これらを集めて溶解し、再び純粋な金として精錬してリサイクルします。そのため、どんな状態であっても、金が含まれている限り、その日の相場に応じた価格で買い取ってもらえるのです。
知識を活かして最高値で売る!タイミングの見極め方と業者の選び方

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買取価格の決まり方をすべて理解した今、最後はその知識をどう活かして、あなたの金を最高値で売るかという実践編です。
結論から言うと、「未来の価格を完璧に予測することは誰にもできない」というのが答えです。しかし、価格変動の要因を理解していれば、ある程度の傾向を掴むことはできます。
- 円安が進行している時: 国内の金価格は上昇しやすいため、売り時と言えます。
- 世界情勢が不安定な時: 「有事の金」として価格が上がりやすい局面です。
- 自分自身が「十分に高い」と思える価格水準に達した時: 欲を出しすぎず、自分なりの「売り時ルール」を決めておくことも大切です。
少なくとも、毎日買取店のウェブサイトで価格をチェックし、上昇トレンドにあるのか、下落トレンドにあるのかを把握しておくことが重要です。
金相場の今後の動向を予測するための情報収集方法
より深く動向を追いたい方は、以下のような情報を日々チェックすることをおすすめします。
- 経済ニュース: アメリカの金利政策(FRBの動向)、為替(ドル円)の動き、主要国の経済指標など。
- 国際ニュース: 地政学リスクが高まるような紛争や情勢不安のニュース。
- 専門家のレポート: 証券会社や貴金属メーカーが発表する市場レポート。
損をしないために!信頼できる買取業者選びの3つの条件
どんなに良いタイミングで売ろうとしても、最後の出口である買取業者選びを間違えれば、すべてが台無しです。
- 情報の透明性が高い: 本日の買取価格を純度ごとに明確に公表しており、手数料の有無についても正直に記載している。
- 専門性が高い: 金だけでなく、ブランドや宝石の価値も正しく評価できる専門の査定士が在籍している。買取実績が豊富である。
- 査定プロセスが誠実: 利用者の目の前で計量・査定を行い、査定額の根拠を一つひとつ丁寧に説明してくれる。
まとめ
金買取価格が決まる仕組みは、一見複雑に見えますが、その根幹は非常にシンプルです。
- 基本は「重量 × 純度 × 1gあたりの相場」という掛け算。
- その「相場」は、世界の金価格と為替レート(ドル円)で決まる。
- 金価格は、世界情勢や経済、金利などグローバルな要因で日々変動する。
- 純度(K18など)に加え、ブランドや宝石などの「付加価値」も重要。
- 最終的な受取額は、業者ごとの「手数料」によって変わるため、総額での比較が必須。
今回解説した知識は、あなたの大切な資産を不当な価格から守り、その価値を最大化するための強力な武器となります。もう、買取店の言うがままに、よくわからないまま金を売る必要はありません。
自信を持って査定に臨み、いくつかの業者を比較検討して、あなたが心から納得できる売却を実現してください。
執筆者プロフィール

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店長 河本 明
買取業界歴15年以上。
買取の得意分野:ブランド品、ジュエリー、時計
ジュエリーコーディネーター ウォッチコーディネーターの資格を保有しております。
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