【初心者向け】日本政策金融公庫とは|基本知識ガイド
日本政策金融公庫は、中小企業や個人の支援を目的として政府が設立した金融機関です。用途や対象者に応じた融資が豊富に用意されています。
この記事では、日本政策金融公庫の基本知識をわかりやすく解説しています。審査に通るためのコツやメリットについてもまとめていますので、これから融資を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
日本政策金融公庫とは

日本政策金融公庫は、「株式会社日本政策金融公庫法」に基づいて設立された、政府が全額出資する財務省管轄の金融機関です。民間の金融機関を補完する役割を担い、中小企業や創業者、農林水産業者など、一般の銀行では融資が難しい層に向けて、低金利かつ長期の融資をおこなっています。
政府が設立した機関
日本政策金融公庫は、2008年に国民生活金融公庫や中小企業金融公庫などが統合されて誕生しました。政府100%出資のもと、営利を目的とせず、政策的な役割に基づく融資をおこなっています。
主な業務は以下のとおりです。
事業名 | 主な目的・役割 |
国民生活事業 | 創業支援小規模事業支援教育ローンなどの個人向け融資 など |
農林水産事業 | コンサルティングビジネスマッチング農業・林業・水産業の振興に向けた融資 など |
中小企業事業 | 新事業に向けた融資設備投資や事業再編を支援する融資海外展開や事業継承を支援する融資 など |
資金の使い道が幅広く、固定金利の商品が多いのも特徴です。地域経済の発展や雇用の創出など、社会的意義のある事業を後押しする公的な役割を担っています。
中小企業や個人を支援する
日本政策金融公庫は「民間では融資が通らない」「創業資金が不足している」といった人たちにとって、頼れる機関です。
とくに創業時は信用実績がないため、民間の銀行から融資を受けるのはハードルが高いでしょう。そうした場合も、事業計画を評価して融資を検討してくれるのが日本政策金融公庫の魅力です。
銀行との違い
日本政策金融公庫と銀行の違いは、融資の目的と審査基準です。
銀行は基本的に営利を目的とし、貸し倒れリスクを避けるため、安定した収益や担保・保証人の有無などを重視した審査がおこなわれます。
一方、日本政策金融公庫は地域経済や雇用の支援を目的としており、創業直後や実績の少ない事業者にも融資が受けやすくなっています。また、金利が低めに設定されており、返済計画を立てやすい点も大きな魅力です。
どんな融資が受けられる?

日本政策金融公庫では、創業支援、小規模事業者支援、農林水産業者支援など、目的別にさまざまな融資制度が用意されています。企業だけでなく個人を対象とする融資も豊富です。ここでは、以下の4つについて見ていきましょう。
- 創業に関する融資
- 事業の強化に関する融資
- 災害に関する融資
- 教育に関する融資
1つずつ解説します。
創業に関する融資
創業融資は、これから新たに事業を始める人や、開業して間もない個人・法人を支援する制度です。創業前からでも申し込めるのが大きな特徴で、自己資金が少ない場合でも、明確な事業計画があれば審査に通る可能性があります。また、保証人や担保が不要で、創業する際の資金調達のハードルが低めです。
創業融資の1つである「新規開業・スタートアップ支援資金」の概要は以下のとおりです。
対象者 | 新たに事業を始める個人・法人事業開始後おおむね7年以内の個人・法人※事業計画の遂行が可能と判断される必要がある |
用途 | 新事業に必要な設備資金・運転資金 |
融資限度額 | 7,200万円(運転資金4,800万円) |
返済期間 | 設備資金:20年以内(うち据え置き期間は5年以内)運転資金:10年以内(うち据え置き期間は5年以内) |
利率 | 基準利率による・税務申告を2期終えていない場合:2.7~4%特定の要件に該当する場合は特別利率が適用される |
このほか、若者・シニア・女性に向けた創業融資や一度事業に失敗した人に向けた再挑戦するための融資なども整備されています。
自分がどういった融資の対象となるか、窓口で相談してみるのがおすすめです。
事業の強化に関する融資
事業の強化に関する融資は、すでに事業を展開している中小企業や小規模事業者が経営力を高めるための融資です。
たとえば、生産性向上を目的とした設備費や、業務を効率化するためのシステム投資、研究開発などが主な用途となります。売上の拡大や事業の再構築を図る際の強力な後押しとなる制度です。近年ではDXやカーボンニュートラルに関連した取り組みも対象とされています。
一例として「企業活力強化資金」の概要を見てみましょう。
対象者 | 卸売業小売業飲食サービス業その他サービス業 など11の区分にわかれる |
用途 | 事業の継続に必要な設備資金・長期運転資金 |
融資限度額 | 直接貸付 7億2,000万円代理貸付 1億2,000万円 |
返済期間 | 設備資金:20年以内(うち据え置き期間は2年以内)運転資金:7年以内(うち据え置き期間は5年以内) |
利率 | 基準利率による概ね2億7,000万円までは特別利率①~③が適用される対象者の区分1~11に応じて適用される特別利率が異なる |
「企業活力強化資金」は、担保や保証人に関して国民政策金融公庫との相談で決定していきます。場合によっては、経営責任者の個人保証が必要です。
自社の経営課題に向き合い、事業をさらに発展させたい企業にとって心強い融資です。
災害に関する融資
災害に関する融資もあります。地震や台風、水害などの自然災害や、突発的な事故・火災などによって被害を受けた事業者を支援するための制度です。
こうした災害に関わる融資「災害貸付」は、日本政策金融公庫が提供する他の融資と併用して利用します。以下は災害貸付の一例です。
対象者 | 災害により直接の被害を受けた人災害による被害を受けた事業者との取引があり、災害によって売上が減少の減少など間接的な被害を受けた人 |
用途 | 被災からの復旧に向けた転資金・設備資金 |
融資限度額 | 各融資制度の限度額+1つの災害につき3,000万円 |
返済期間 | 設備資金:10年以内(うち据え置き期間は2年以内)運転資金:10年以内(うち据え置き期間は2年以内) |
利率 | 併用する融資制度による |
施設や設備の復旧、商品や原材料の仕入れ直し、営業再開のための資金など、災害後の事業再建に必要な費用をカバーできます。生活基盤の維持、地域経済の回復を目指す中小企業にとって、心強い支援策といえるでしょう。
教育に関する融資
個人向けには、教育に関する融資もあります。大学・高校などへの進学にかかる費用をサポートするための制度です。
こうした教育に関する融資「国の教育ローン」は、日本政策金融公庫が個人向けに提供している融資制度です。概要を見ていきましょう。
対象者 | 高校・大学・専修学校などに入学・在学する子どもを持つ保護者 |
用途 | 入学金・授業料・教材費・通学費・住居費など、入学時および在学中に必要な費用 |
融資限度額 | 子ども1人につき350万円まで |
返済期間 | 20年以内在学期間中は、元金据え置きとして利息のみの支払いが可能 |
利率 | 年3.15%※母子家庭・父子家庭・世帯年収200万円以内など、一定条件に該当する場合は年2.75% |
進学にともなう経済的負担を抑え、子どもたちの夢の実現を応援する融資制度です。授業料のほか、受験費用や教材の購入など幅広く使えます。
利用するための条件

日本政策金融公庫の融資を受けるには、いくつかの条件を満たす必要があります。とくに、創業融資では事業の見通しや本人の信用状況が重要な判断材料です。
ここでは、事業融資における3つのポイントを見ていきましょう。
創業計画が必要
創業前や開業直後に融資を希望する場合、具体的かつ実現可能な創業計画を作成しなければなりません。事業のコンセプト、市場調査、収支予測、人員体制などをまとめ、事業の将来性や持続可能性を示す必要があります。
日本政策金融公庫の担当者に自分の言葉で説明できるようにしておくと、説得力と信頼感が増し審査にも有利です。
安定した収支が重要
すでに営業している企業では、過去の収支実績も審査材料になります。安定した売上と利益が見込まれるかどうかがポイントです。
赤字が続いていると審査において不利になる可能性もあるため、融資を申請する前に、経費の見直しや売上増加の施策を検討しておくと良いでしょう。
他社借入が影響する
他の金融機関や消費者金融などからの借入状況も、融資の審査に影響します。借入総額が大きかったり、返済が滞っていたりすると、信用度が低いと判断される可能性があります。
現時点での借入状況を整理し、可能であれば一部返済するなどの対策が有効です。融資を受けたとしても、遅滞なく返済できる見通しを示すと良いでしょう。
融資を申し込む5ステップ

日本政策金融公庫の融資を申し込む際は以下の5ステップを踏みます。
【申し込みの5ステップ】
①書類を準備する
②窓口で相談する
③面談で説明する
④審査を受ける
⑤結果を待つ
順を追って見ていきましょう。
①書類を準備する
まず、申請に必要な書類をそろえます。創業融資であれば創業計画書、既存事業であれば直近の決算書などが必要です。身分証や借入申込書、見積書や設備購入の証拠資料も求められます。必要書類の書式は、日本政策金融公庫の公式サイトからダウンロードが可能です。
②窓口で相談する
書類が整ったら、最寄りの支店に電話やWebから予約を入れ、窓口で相談します。
初回相談では、提出書類の確認や、申請予定の融資制度が自社に適しているかどうかのアドバイスを受けられます。不明点があれば、このタイミングで積極的に質問しましょう。
③面談で説明する
窓口での相談後、融資担当者との面談があります。事業内容や創業の動機、将来的な見通しなどについて説明する面談です。
自信をもって話せるように、事前に練習しておくのがおすすめです。
④審査を受ける
面談の内容や提出資料をもとに、融資の可否を決める審査が実施されます。収支計画の妥当性や事業主の信用情報、他社からの借入状況など、さまざまな観点から判断される審査です。
追加資料の提出を求められるケースもあるため、慌てずに済むよう、事前にできる限り準備を整えておく必要があります。
⑤結果を待つ
審査に通ると、融資に関する連絡が届きます。審査結果の通知は、申請から2~3週間程度が目安ですが、時期や内容によって前後する場合もあります。無事に融資が承認されれば、契約手続きのあと、指定した口座へ融資金が振り込まれます。
審査に通るためのコツ

日本政策金融公庫の審査をスムーズに通過するには、以下のコツを押さえるのが大切です。
- 計画書の質を高める
- 自己資金を用意する
- 借入理由を明確にする
融資するに値すると判断されるには、事前準備が要となります。詳しく見ていきましょう。
計画書の質を高める
計画書は、創業計画書や事業計画書、設備投資計画書など、事業の将来性や実現の可能性を示す重要な資料です。収支の見通しや市場分析、競合との差別化などを具体的に記載しましょう。数字に根拠を持たせると信頼性が高まり、審査に有利です。
自分の言葉で熱意や事業のビジョンを伝えると、計画書に説得力が生まれ、融資担当者との面談で好印象を与えるカギとなります。
自己資金を用意する
自己資金も用意しておくと良いでしょう。自己資金があると、事業への本気度や、キャッシュフローの安定性を示せるからです。
自己資金がないと「リスクを他人に背負わせるだけ」と判断され、審査に不利となる可能性があります。必要資金の3分の1程度を自己資金で賄えると良いでしょう。
借入理由を明確にする
融資の目的をはっきりさせるのも大切です。
「なんとなく資金が欲しい」「余裕があったほうがいいから」といった曖昧な理由では、審査の通過が難しくなります。
設備投資や運転資金など、具体的な用途を挙げ、必要金額と照らし合わせつつ説明しましょう。用途と融資金のしっかりした紐づけが、審査の通過率をアップさせます。
日本政策金融公庫のメリット

日本政策金融公庫のメリットは以下の4つです。
- 長期返済ができる
- 低金利で借りられる
- 保証人不要も選べる
- 相談体制が整っている
1つずつ見ていきましょう。
長期返済ができる
返済期間が長く設定されているため、会社や家庭の経済を圧迫しない返済計画が立てられるのが大きなメリットです。融資の種類によって返済期間は異なりますが、運転資金の場合5年〜10年、設備資金では最長20年の返済期間が認められています。
毎月の返済額が抑えられるため、事業の立ち上げ段階でも安心して運営に集中できるでしょう。
低金利で借りられる
公的な金融機関であるため、金利は一般的な銀行や消費者金融よりも低く設定されています。要件を満たすと、さらに優遇金利が適用される可能性もあります。金利の負担が少ない分、資金繰りに余裕を持てる点が大きなメリットです。
保証人不要も選べる
日本政策金融公庫には、保証人がいなくても申し込める制度があります。新規事業者や個人事業主にとって、保証人を見つけるのは予想以上に負担がかかるものです。この点をクリアにできるのは、融資を求める人にとって心強いメリットといえるでしょう。
事業計画がしっかりした者であれば、保証人がいなくとも融資の承認が下りる可能性が高まります。
相談体制が整っている
細やかな相談体制もメリットです。創業支援セミナーや個別相談など、資金調達に関する不安や疑問を丁寧にサポートしてもらえます。
専門のスタッフが、事業内容や将来に向けた計画をじっくり聞いてくれるため、初めての融資でも安心して手続きを進められるでしょう。
融資が難しいときの代替手段

日本政策金融公庫の融資は、資金繰りに悩む事業者にとって心強い制度です。しかし、状況によっては審査に通らない場合や、即日資金が必要なケースもあります。
こうした場合は融資にこだわらず、他の選択肢を検討するのもおすすめです。
ここでは、資金調達の手段として活用できる「質預かり」と「買取サービス」を紹介します。
質預かり
質預かりは、手元の品物を担保として預け、その価値に応じた現金を受け取る仕組みです。審査や保証人が不要で、スピーディーに現金化できます。
質屋にブランドバッグや腕時計、宝石などを持ち込み、質札と査定額を受け取るシステムです。
返済期間内に元金と利息を支払えば、品物は戻ってきます。一時的に資金が必要な方向きです。
買取サービス
買取サービスは、質預かりとは違い、品物を売却して現金化します。返済の義務がない代わりに、品物は戻ってきません。ただし、店舗買取の場合は質預かりと同様、即日の現金を受け取れます。
時間に余裕がある場合は、店舗に行かずとも買取が可能な宅配買取や出張買取も可能です。買取金額は市場のニーズや希少性などで上下する点に注意しましょう。
まとめ
日本政策金融公庫は、国が株を100%保有する公的な金融機関です。国民生活事業、中小企業事業、農林水産事業の3つの主要部門を通じて、幅広い事業者を支援しています。
低金利や長期返済、保証人不要といったメリットがある一方で、しっかりとした計画書や自己資金が求められ、審査を通過するための準備が欠かせません。
審査に不安がある場合は、質預かりや買取サービスなどの代替手段も検討してみてください。手元のお品を預けたり売却したりすることで、資金調達が可能です。
質屋の中島では、豊富な買取実績と確かな鑑定眼を持つスタッフが対応し、お客様の資金調達をサポートいたします。
質預かり・買取いずれも対応可能です。LINEもしくはお問い合わせフォームより、いつでもご連絡ください。
執筆者プロフィール

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店長 河本 明
買取業界歴15年以上。
買取の得意分野:ブランド品、ジュエリー、時計
ジュエリーコーディネーター ウォッチコーディネーターの資格を保有しております。
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