運転資金を融資で賄う方法とは? 目安の資金額についても解説
事業を継続・成長させるうえで欠かせないのが運転資金です。仕入れや人件費、家賃といった日々の支出を支える運転資金は、タイミングを逃すと資金繰りに大きく影響します。
「いくら必要か分からない」「どこから借りればいいのか不安」と感じている人もいるのではないでしょうか。
この記事では、運転資金の種類や計算方法、審査を通過するコツまで、初心者にもわかりやすく解説します。事業の運転資金に不安がある人は参考にしてみてください。
運転資金とは

まず、運転資金の基本について見ていきましょう。
運転資金の種類や計算方法、融資額の目安について解説していきます。
運転資金の用途
運転資金とは、企業が日常的な事業活動を維持するために必要な資金です。用途は多岐にわたり、以下のような支出が含まれます。
- 原材料や商品の仕入れ費用
- 広告・家賃・光熱費などの販管費
- 従業員への給与や社会保険料などの人件費
これらは「ランニングコスト」とも呼ばれ、事業を継続的に回すうえで欠かせません。
企業の業種や規模によって、必要とされる運転資金の内訳は異なります。たとえば、製造業では原材料費、小売業では仕入れ資金が大きな割合を占める傾向です。
運転資金の用途を具体的に分けると、何にどれだけの資金がかかるか把握できます。
運転資金の計算方法
運転資金の計算方法は以下の通りです。
運転資金 = 売掛金 + 棚卸資産(在庫) − 買掛金 |
この式は、まだ入金されていない資産(売掛金+在庫)から、支払いを先延ばしできる金額(買掛金)を差し引いた額を示しています。手元に必要な資金の目安です。
以下のケースを考えてみましょう。
売掛金:150万円(すでに売ったが入金は来月)棚卸資産:100万円(在庫として保有中)買掛金:80万円(仕入先への支払いは来月) |
この場合、150万円+100万円−80万円=170万円で、必要な運転資金は170万円となります。支払いが先延ばしできる80万円を差し引いても、売上入金を待つ間、事業を回すために170万円が必要という意味です。
運転資金の融資額の目安
運転資金の融資額は、月商の2〜3ヶ月が目安とされています。たとえば、月商が200万円の企業であれば、400〜600万円程度が融資額の基準です。
ただし、運転資金の額は業種や経営状況、資金の使い道によって大きく変わります。製造業のように在庫や外注費がかさむ業態では、さらに多くの運転資金が必要になる可能性があります。一方で、固定費中心のサービス業などは、比較的少ない額で事業が回る傾向です。
運転資金の融資が必要な場面

運転資金が必要な場面として、以下の3つがあります。
- 事業を拡大するとき
- 資金不足に陥ったとき
- 複数の借り入れを一本化するとき
詳しく見ていきましょう。
事業を拡大するとき
事業の拡大には、新規事業所の開設や広告の強化など大きな費用がかかるため、運転資金の融資が必要となるケースがあります。
たとえば、飲食店が2店舗目を出す場合、店舗改装費や採用費用、備品の購入費が初期投資として必要です。これらをすべて自己資金で賄うのは難しく、融資で運転資金を調達するのが一般的です。
拡大フェーズでの融資は、事業の成長と収益の増加が見込まれ、金融機関からも前向きに評価される傾向があります。その際、どの程度の資金が必要か、投資後の利益予測が現実的かを示せると良いでしょう。
資金不足に陥ったとき
資金不足のときも、運転資金の調達が必要です。企業が資金不足に陥る原因はさまざまですが、主に以下が挙げられます。
【資金不足の原因】
- 売上の減少
- 急な設備の修理
- 原材料費や光熱費の高騰
- 売掛金の回収遅延や貸し倒れ
- 外注費の増加や契約の先払い
予測不可能な事態に備えるために、運転資金の融資は有効です。特に中小企業では、キャッシュフローの変動に耐えられるだけの手元資金を持っていない場合があります。こうした状況に陥った際に備え、日頃から運転資金の必要額を把握し、金融機関と相談できる体制を整えておくことが肝要です。
複数の借り入れを一本化するとき
数ヶ所からの借り入れを一本化したいというときも、運転資金としての融資が必要です。
複数の金融機関から借り入れをしていると、毎月の返済日がバラバラになり、資金管理が煩雑になります。また、それぞれの金利が異なるため、無駄な利息を支払っているケースも少なくありません。こうした場合に、借入の一本化が効果的です。
複数の借入を運転資金の融資でまとめて、返済スケジュールの統一を検討する際、金利の見直しも可能です。たとえば、年利7%のローン2件を、年利3%の融資に一本化すれば、金利負担を大幅に削減できます。資金繰りに余裕ができ、経営の見通しも立てやすくなるでしょう。
運転資金の融資で重視される3つのポイント

融資の審査では、以下の3つが重視されます。
- 信用度が高いか
- 担保や保証人の用意があるか
- 実現可能な事業計画があるか
1つずつ解説していきます。
信用度が高いか
融資を受ける際に重視されるのが「信用度」です。信用度とは、金融機関が企業に対して「この会社はきちんと返済してくれるだろう」と判断する基準値のことです。過去に返済遅延がないか、納税を怠っていないかといった点がチェックされます。
税金を滞納していたり、クレジットカードや過去の借り入れに延滞履歴があったりすると、たとえ黒字経営であっても融資が難しくなるかもしれません。逆に、毎期きちんとした決算書を提出し、信用情報に問題がなければ、有利な条件での融資が期待できます。
信用度を高めるためには、透明性の高い運営と誠実な取引の積み重ねが不可欠です。
担保や保証人の用意があるか
金融機関は貸し倒れリスクを避けるため、運転資金の融資審査では担保や保証人の有無も重要視されます。担保とは、返済が滞ったときに金融機関が換金できる資産です。事務所の不動産や所有する機械設備などが該当します。一方、保証人は借り手が返済できない場合に代わりに返済する人物や法人を指します。
創業間もない企業や赤字が続いている企業は、担保や保証人の用意がないと融資を受けられない可能性があります。無担保融資の商品も提供されているものの、担保や保証人を設定するほうが審査に通りやすいのが実情です。不動産や設備などの資産を確認するとともに、信頼できる保証人候補がいれば早めに相談しておくと良いでしょう。
実現可能な事業計画があるか
どれだけ信用度が高くても、資金の使い道が不明確だったり、返済が見込めない事業計画だったりすると、融資の審査には通りません。
良い事業計画には、具体的な売上予測やコスト構造、市場分析、リスク対策などが盛り込まれています。
業種 | 事業計画の例 |
飲食業 | 半年後にテイクアウト専門の窓口を店舗外に設置し、周辺のオフィス需要を取り込む。新メニューを3品追加し、ランチタイムの回転率を上げて月商を50万円増やす。過去の近隣飲食店の事例や試験販売の反応をもとに収益予測を立てている。 |
製造業 | 来期に小ロット生産対応の新しい加工機を導入し、既存の大手顧客からの追加発注に対応する。加工機の導入により納期短縮が可能となり、売上が月80万円増加する見込み。顧客からすでに打診があり、試作品の評価も良好。 |
サービス業 | 3ヶ月後にオンライン予約システムを導入し、顧客の利便性を向上させる。導入により予約の取りこぼしを防ぎ、キャンセル率の改善や新規顧客の獲得につなげる。現在20%のキャンセル率を10%に抑え、月25件の来店増加を見込む。平均単価を12,000円とすると、月商で約30万円の増加が期待できる。 |
テンプレ的な資料ではなく、自社の実情に即した内容が評価されます。
運転資金の融資を受ける方法

運転資金の融資を受ける方法は以下の5つです。
- 銀行
- 信用金庫
- 消費者金融
- 自治体の融資制度
- 日本政策金融公庫
それぞれの特徴を順番に見ていきましょう。
銀行
銀行は、資金調達の代表的な選択肢の1つです。金利が1〜4%と比較的低く、借入額の上限も高いため、大口の融資を必要とする企業に適しています。審査基準は厳しく、過去の財務実績や返済能力、担保の有無などが細かくチェックされます。
たとえば、黒字決算が3期続いている法人であれば、低金利かつ長期返済といった条件での融資が期待できるでしょう。逆に、赤字決算や創業間もない企業では融資が難しい可能性が高いです。自己資金比率や担保の準備が、審査通過のカギを握ります。
信用金庫
信用金庫は地域密着型の金融機関で、地元の中小企業や個人事業主を支援する傾向が強い特徴があります。銀行に比べて審査が柔軟で、相談にも親身に対応してくれることが多いです。
金利はやや高めですが、地域内での信用を築いていれば、有利な条件で借りられる可能性があります。
たとえば、長年同じ地域で事業を営んできた飲食店などは過去の取引実績が評価されやすく、前向きに融資の話が進みやすいです。地域ネットワークを活かした事業運営が、信用金庫からの信頼を得るポイントといえます。
消費者金融
消費者金融は、申込みから審査完了までの期間が短く、即日融資を可能とする業者もありスピード面に優れています。金利の上限は18%程度と高めで、少額・短期の借り入れ向きです。無担保で融資を受けられる点は魅力ですが、返済期間や利息負担を慎重に見極める必要があります。
突発的な支払いに対応するために借り入れた金額を数ヶ月で返済できる場合は問題ありませんが、長期的な運転資金には不向きです。継続的な利用は経営を圧迫する要因となるため、一時的な手段として活用するのが現実的でしょう。
自治体の融資制度
地方自治体が提供する融資制度は、低金利かつ条件の良い融資が受けられる点が魅力です。保証料の一部補助や利子の減免などの優遇措置もあります。
【優遇措置の例】
- 保証料の全額補助
- 無利子または低金利での融資
- 長期にわたる据置期間の設定
こういった優遇措置を活用すれば、金利負担や保証料などのコストを抑えつつ、運転資金をじゅうぶんに確保できます。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、国が運営する政府系の金融機関で、創業支援や小規模事業者向けに特化した融資制度を提供しています。金利も0.3〜2.0%と非常に低いため、創業して間もない事業者や、自己資金が少ない事業者が利用しやすいのが特徴です。
無担保・無保証人でも申請が可能で、相談体制も整っており、初めての融資に適しています。
融資審査を通過するコツ

運転資金の融資審査に通るコツは以下の3つです。
- 自己資金を用意する
- 融資金の用途を明らかにする
- 現実的な事業計画を立てる
1つずつ解説します。
自己資金を用意する
融資審査を通過するために最も重要なのが、自己資金の有無です。自己資金とは、借入に頼らず自分で用意できる資金を指します。自己資本金が多いと、金融機関は「返済能力がある」と判断し、融資を前向きに検討してくれます。
自己資金を準備する方法には以下があります。
- 計画的な貯蓄
- 不要な資産の売却
- 家族や親族からの支援
自己資金の割合が大きいほど、利率や返済期間など融資の条件が有利になる可能性が高いため、早めの準備をおすすめします。
融資金の用途を明らかにする
融資審査の際は、融資金の用途をはっきりさせましょう。用途が曖昧だと、金融機関は「本当に返済できるのか?」と不安に感じます。逆に、明確な目的があれば「現実的な事業計画を立てている」と評価され、審査に通りやすくなります。
【融資金の使用例】
- 仕入費用:100万円(新商品開発のため)
- 人件費:50万円(アルバイト2名増員分)
- 広告費:30万円(SNS広告を3か月間展開)
数字と目的をセットで示すと、資金使途の妥当性が伝わります。可能であれば、見積書や契約書のコピーも添付しておくと、説得力がさらに高まるため審査に有利です。
現実的な事業計画を立てる
地に足のついた事業計画を立てると、融資の成功に近付きます。金融機関は貸し倒れのリスクを抑える意味でも、堅実な企業や事業者に融資したいと考えるからです。
事業計画書には以下を記載しましょう。
- 市場調査に基づいた売上予測
- 明確な販促戦略と集客導線
- 収支計算に基づく損益計画
- リスクに対する代替案
たとえば「2年目に月商100万円、営業利益20万円を目指す」など数値を盛り込むと事業計画の説得力が増します。さらに、数字の裏付けとなるデータを提示すれば、金融機関は「計画通りに収益が出る可能性が高い」と判断します。自社の実情に合った具体的な事業計画が、融資を実現するカギです。
まとめ
運転資金の融資は、事業の継続と成長を支えるうえで重要な役割を担う資金です。必要な金額を明確にしたうえで、今の状況に合った金融機関や制度を選びましょう。
融資の審査に通るためには、信用力の確保と現実的な事業計画が欠かせません。日頃から経営状態を把握し、余裕のある資金繰りをおこなうと融資の担当者に好印象です。融資制度を正しく理解し、計画的に活用すれば、健全な経営の基盤につながります。
事業を立ち上げて間もない人や、まだ実績が少ない人は、一時的な運転資金の調達方法として質預かりや買取サービスといった方法もあります。質預かりはお客様のお品物を担保にお金を借りる方法で、買取はお品物を売却して現金化する方法です。
質屋の中島では、迅速な対応と丁寧な鑑定で運転資金の調達をサポートいたします。質預かり・買取いずれも対応可能です。LINEもしくはお問い合わせフォームより、お気軽にご連絡ください。
執筆者プロフィール

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店長 河本 明
買取業界歴15年以上。
買取の得意分野:ブランド品、ジュエリー、時計
ジュエリーコーディネーター ウォッチコーディネーターの資格を保有しております。
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